フランツ・ファランクス初期短篇集「水瓶座の森」より

(中略)
「それはつまり、ネイビーファンタズマみたいなものと考えてよいのだね?」
1942年製バッチュードタイプのパイプをくわえながらロイメンデン氏は言った。彼はアンティークパイプの蒐集家(コレクター)である。
「おおまかに言えばそうなんだが、決して同じものではないんだ。なによりネイビーファンタズマと違って、夜間発光体を持っていない」
まさか、とロイメンデン氏は顔を上げて呟いた。
「光らないのかね?」
「まったく光らないんだ。エレファントドリルの例もあるから50メートルの高さから落としてみたんだがそれも駄目だった」
「しかしねえ、君」
ロイメンデン氏は訝しげな顔をしながら立ち上がり、水槽のエンゼルファルコン1号2号を眺めている。
「夜間発光しないネイビーファンタズマがどうやって北欧一のものまねチャンピオンになったんだい?いや、そもそもサバンナ・ド・パリスがあるだろう。あそこはロシアンマフィアが幅を利かせてるんだ。とても生きていける環境じゃない」
「だからこうしてわざわざ報告に来ているんじゃないか。こういう話は君の方が詳しいだろう?」
「私はなんでも屋じゃあないよ」
そう言うとロイメンデン氏はエンゼルファルコン1号2号に餌を撒き始めた。今日は2匹とも機嫌が良いらしい。暫くするとロイゼンメイデン氏は餌やりの手を止めて言った。
「もしかすると、メテオカボチャの仕業かもしれないな」
「メテオカボチャ?」
(続く)