きのことたけのこ、そして若者たち

明治製菓の新入社員研修は「きのことたけのこを半分ずつ入れて売ればいいんじゃないですか?」と無邪気な意見を言う若者への指導から始まります。彼らはまだ、それが社内でいかに禁忌とされているかを知らないのです。禁忌とされている理由を知るにはまず、戦後の財閥解体の歴史を紐解かなければなりません。そしてそれは、GHQ統治下の日本で、激動する時代に翻弄されながらも信念を貫き通したある男の歴史でもあるのです。

 <岸川新一郎『きのことたけのこ、そして若者たち』より抜粋>


【著者紹介】岸川新一郎
富山県出身。1969年生まれ。関西理心流大学卒業後、銀行員を経て1996年『綱引きラプンツェル』でデビュー。その他の著書に『氷山家族』『馬と眠れば』『恋する矢文 <柳生石舟斎異聞録>』などがある。